OGKのこれまで
HISTORY
王子合金創業者の石塚勝蔵は、金属製造を行う企業で金属溶解について研鑽を重ね、その後東北大学金属研究所へ就職します。
そして、金属溶解技術や、合金製造の知識を買われ、1927年(昭和2年)赤羽治金株式会社の設立メンバーとして会社に就職しました。
しかし、就職して6年後結核を患い赤羽治金を退職し、地元小田原で療養に励みました。
回復した勝蔵は、地元小田原の名士の財力を得て、1936年(昭和11年)東京王子にて合資会社王子合金工業所を設立しました。この時、戦争の足音が間近に迫っていた時でした。
勝蔵は、結核を患ったことから兵役を免除され、会社経営に力を入れていきました。戦後復興の頃は、スクラップや、アメリカ軍の補充物資などを溶解し、合金製造を行っていました。現在と異なり、高純度の原材料を加工するわけではなかったため、勝蔵の知識無くして合金製造は行えませんでした。当時は、日常生活の中で手に入る原料から必要な原料を抽出し合金製造にも利用していたと、現社長石塚勝一郎は当時を振り返ります。
王子合金が最初に溶解を手掛けた金属は、ニクロム線でした。ニクロム線を溶解・伸線できる事が業界内に知られていくと、そこから様々な金属の溶解・伸線依頼が来るようになり、溶接用の金属も溶解していく事になります。1963年(昭和38年)には「小田原工場」を設立する事となり、溶解炉もアーク式溶解炉からMG式モーター発電の電源に改良を施し様々な金属の溶解に挑戦していきます。(航空写真:昭和50年頃の王子合金小田原工場)ステンレスをはじめ、自社溶解して精製した純ニッケル(9.5mm)も需要に合わせて製造を行っていました。王子合金の柱となる「溶接用金属」と「電子部品用金属」の2本柱が少しずつ形成されていきました。
1965~1975年(昭和40~50年頃)、ステンレス用の連続伸線機を導入しステンレスの伸線だけでなく、その他の合金線にもこの連続伸線機を活用することで、これまでの1/3程度の手間で効率的に製造を可能にする工場ラインを完成させます。これは、当時非常に画期的な事で、他社が単式伸線機による製造を行っているのに対し、1つのラインで3倍もの効果をあげていました。
他社の追随を許さぬ製造力を手に入れた瞬間でした。
ニッケルや、ニクロム、銅ニッケル合金は、家電や自動車産業の成長と比例し、需要は拡大し、会社も成長を続けていました。
アメリカ向けの溶接材料の製造量も増加し、製造品目は国内だけに限らず、台湾向けにもステンレスの溶接材料を出荷し始めました。
この後、顧客の要望が「溶解」だけでなく「棒」(溶接棒)や、「線」(合金線)に移り、鋼種と受注量が増えてきた事で、自社溶解の限界を感じ、特殊製鋼様(現在の大同特殊鋼様)に溶解を委託し、アライアンス強化をしていく道を進みます。
溶解は、1993年頃まで自社でも行っていましたが、最終的には伸線加工に業務をシフトさせていきました。
「電子部品用金属」の主力材料である純ニッケルは、ラジオなどの真空管(MG管)に使用され、その特性からブラウン管テレビのステム(部品)にもニッケルが使用されていき、家電製品の製造に欠かせない部品材料となっていきました。
この後、爆発的なテレビの普及により大量のニッケルが使用さることとなり、ニッケルの王子合金として国内の大手テレビメーカー数社に90%以上という驚異的な物量を納入していきます。ニッケルはブラウン管の後にやってくる液晶パネル用のCCFL管(バックライト)にも多く使われていきました。
2代目、石塚勝一郎の時代は、高度成長とともに、業務拡大を行い時代の先端技術とともに成長する会社となりました。2011年の震災までは、原子力発電所向けの合金線の製造なども行い、幅広い用途に素早く対応するために、300トン以上にも及ぶ原材料在庫を確保し、お客様にできる限り早く納入することや、小回りの利く小ロット生産に対応してきました。
時代が変わりゆく中で、新しい設備・機械・製品・部品が次々に生まれてきましたが、「ニッケル」は常に必要とされ続けてきました。
王子合金は80年以上にわたりニッケル合金を製造する事により、社会に貢献してまいりました。
王子合金は、これまで電化製品をはじめとして、時代の最先端の分野に貢献してきました。最近ではEVや半導体などの革新技術にも製品が用いられるようになってきました。製品が世の中にいきわたるにつれて、社会インフラにも変革の時期が訪れています。
私たちは、最先端製品に使用される素材を世の中に提供してきましたが、今後は製品を使用するために必要となる社会インフラの分野にも進出していこうと思っています。例えば、EVが行き渡れば、大量の電力需要が生まれます。発電プラントや電力供給ネットワークの整備が急務になっています。
宇宙航空関連事業については、すでに大手重電メーカーとタイアップして試作品の開発をしています。不安定な国際情勢の中で、エネルギーの多様化は大きなテーマになっていますが、水素をはじめとする次世代エネルギー関連の案件にも取り組んでいます。どれもまだ量産への道のり半ばですが、王子合金は今後も社会インフラから宇宙まで幅広い分野へ製品を提供していきます。
常務取締役 石塚 信太郎